平成18年5月から新『会社法』がスタートしました!
新『会社法』は平成18年5月から施行されることとなりました。それまでの商法、有限会社法等の会社関連法規が改正・廃止され、会社法に一本化されることにより、すべての会社は会社法に従って行動することとなりました。
(1)会社設立時
● 最低資本金制度の廃止
従来は、株式会社1,000万円・有限会社300万円の最低資本金が必要と定められていましたが廃止され、資本金1円で株式会社が設立できるようになりました。また、資本金1円まで減資することも可能です。
● 発起設立や増資に際して、資本の残高証明を用意すればOK
従来、必要とされていた資本の払込証明が不要とされますので、資金を何週間も銀行に預けておくのではなく、すぐに使えるようになりました。
(2)会社の機関設計
● 定款に記載することにより、自由に機関設計することが可能に
ほとんどの中小企業では、最低限、株主総会と取締役1名が設置されていれば問題ありません。取締役を複数にしたり、監査役を設置することは任意です(機関構成を増やすには定款で別途定めることになる)。従来は、取締役3名と監査役を設置するために社長の家族、親戚、友人等に就任を依頼することも多かったと思われますが、必ずしも必要でなくなりました。
● 取締役の任期が最長10年まで延長可能
従来は、取締役の任期は2年とされていましたが、株式譲渡制限会社では取締役の任期を最長10年まで延長することが可能になりました。今まで、2年毎に役員改選登記の費用がかかっていましたが、これを節約することができます。
(3)会計参与制度
● 会計参与を設けることが可能に
会計参与とは、会社の決算書を作成する任意の機関です。通常は、顧問税理士に別途報酬を支払って就任を依頼するケースが多いと言われています。会計参与は、決算書に虚偽記載があったとき、一定の場合を除き、損害賠償責任を負うことから、会社の決算書に対する銀行等からの信用が高まることが期待されています。
(4)自己株式取得
株主から自己株式を取得する場合、2通りの場合が考えられます。
● ある株主が株式を買い取ってほしいと会社に申し入れた場合
これまでは、定時株主総会で決議しなければ自己株式を(特定の)株主から会社が買い取ることはできませんでしたが、臨時株主総会を開催していつでも取得が可能になりました。
● 今後、株主から自己株式の買い取りの申し入れがなされる可能性がある場合
公開買付に類似した方法で、自己株式を取得することも可能になりました。予め株主総会で、取得する自己株式の数・取得額等を決議しておけば、1年内に限り取締役会決議等をもって、自己株式を買い取ることが可能です。
(5)譲渡制限株式関係
● 相続等の場合でも取締役会の承認の対象とすることができます
これまでの商法では、譲渡制限株式を相続等により株主の相続人が取得した場合には、取締役会の承認の対象とすることができません。そのため、現在の株主間は信頼関係で結ばれていても、ある株主が亡くなり、その相続人が株式を相続する場合、会社にとって望ましくない株主が入ってくる可能性があります。
新『会社法』では、相続等の場合でも承認の対象とすることにより、望ましくない株主の参加を拒絶することが可能となりました。さらに、譲渡制限株式を取得した相続人に対し、当該株式を会社に売り渡すことを請求できる旨を定款で定めることが可能です。
(6)「利益処分案」のポイント
● 「利益処分案」が廃止
「利益処分案」の代わりに、「株主資本等変動計算書」を作成が必要です。
● 利益配当が期中に何度でも行える
これまでは、期末配当と中間配当しか認められていませんでしたが、会社の業績がよければ、会社は配当を随時行えます。
(7)その他
● 有限会社法が廃止
最低資本金制度の廃止や、会社の機関設計の改正により、有限会社と株式会社を区別する意義が乏しくなり、有限会社法が廃止されました。
これまでの有限会社は、株式会社に組織変更するか、“特例有限会社”として存続するかの選択が迫られまています。資本金は1円でもよいとされていることから、従来より株式会社への組織変更が容易になりました。
● 会社形態として、「合同会社」が創設
「合同会社」は、内部関係は組合のように、規制に縛られず自由な経営ができ、外部関係は株式会社のように有限責任(出資金までしか出資者は責任を負わない)とされています。
会社法キーワード
● 株式譲渡制限会社
定款上、株式を譲渡するには取締役会の承認決議を必要とする定めがある会社をいいます。ほとんどの中小企業は、株式譲渡制限会社と言われています。自社が株式譲渡制限会社かどうかは定款で確認しましょう。
● 特例有限会社
現行の有限会社法がほぼそのまま適用される会社です。取締役の任期は従来どおり無く、決算広告も不要です。
有限会社はどう対応したらよいか?
新『会社法』では有限会社法が廃止され、会社法に一本化されました。有限会社は今後どのように対応すべきでしょうか。
既存の有限会社はどうなるの?
有限会社法は廃止されましたが、有限会社が廃止になるわけではありません。経過措置により、「特例有限会社」として、今までどおり「有限会社」の商号を使用して継続できます。また株式会社への移行も可能です。ただし有限会社の新設はできません。特例有限会社がいつまで認められるかは未定です。
特例有限会社になるためには何か手続きが必要ですか?
手続きは何も必要ありません。変更登記も必要ありません。会社法施行後は何もしなければ自動的に特例有限会社になっています。
特例有限会社は会社法上どのように扱われるのですか?
特例有限会社は、法律上は株式会社として扱われますが、特則(例外規定)が設けられ、以前の有限会社に係る下記の規定がそのまま踏襲されます。
@ 商号
⇒ 「有限会社」の文字を使用しなければなりません。
A 取締役の任期
⇒ 従来どおり、法定の任期を設ける必要はありません。改選をしなくても、ずっと取締役を続けることができます。
B 会社の機関
⇒ 株主(社員)総会と取締役は必須機関であり、監査役の設置は任意です。
C 株主(社員)総会の特別決議
⇒ 総株主(総社員)の半数以上の出席、かつ総株主の議決権の4分の3以上が必要です。
D 決算広告
⇒ 従来どおり不要です。
また有限会社特有の規定については、次のとおり、株式会社の規定に読み替えられることになります。
会社法施行前 会社法施行後 社 員 株 主 持 分 株 式 出資1口 1 株 社員総会 株主総会 社員名簿 株主名簿 株式会社に移行するにはどうすればいいのですか?
特例有限会社から通常の株式会社に移行するには次の手続きが必要です(特例有限会社も株式会社の一種となるので通常の株式会社と呼びます)。
@ 商号を「株式会社」の文字を用いたものに変更する旨の定款変更の株主総会決議
会社法の施行日以後は、特例有限会社は法律的に株式会社になっています。このため組織変更手続きではなく、定款変更による商号変更手続きが必要になります。
★施工日前に株式会社に移行する場合は組織変更手続きが必要です。
A 特例有限会社についての解散の登記及び商号変更後の株式会社についての設立の登記
資本金については最低資本金制度が廃止されたので、現在の資本金のままで問題ありません(会社法施行日前であれば最低資本金制度の適用を受けます)。
特例有限会社のままでいたほうがよいのでしょうか、それとも株式会社へ移行した方がよいのでしょうか?
どちらを選択してもそれぞれにメリットとデメリットがあります。あせらずに双方の特徴をよく研究して、自社にあった選択をしましょう。
特例有限会社のメリット (株式会社のデメリット)
@ 取締役・監査役には任期がない
特例有限会社の取締役等には任期はありません。株式会社なら任期は取締役原則2年、監査役原則4年ですが、株式譲渡制限会社で定款で定めれば最長10年まで延長が可能です。しかし任期はありますので選任ごとに取締役・監査役の変更登記が必要です。特例有限会社は任期がないので、変更がない限り登記は必要ありません。
A 特例有限会社へは自動的に移行
有限会社から特例有限会社へは特別な手続きをしなくても自動的に移行できますが、株式会社に移行する場合、商号変更の株主総会決議、特例有限会社の解散登記と商号変更後の株式会社の設立登記が必要です。
ちなみに登録免許税は解散の登記に3万円、設立の登記に資本金額の1,000分の1.5(税額が3万円未満の場合は3万円)が必要です。
B 決算公告義務がない
特例有限会社には決算公告義務がありません。これに対して株式会社は定款に定める方法(通常は官報)で決算公告をしなければなりません。
C 今までの商号を継続使用
特例有限会社は慣れ親しんだ商号を引き続き使用できるので、商号変更に伴うコスト、たとえば看板やハンコ、名刺等の作り直しの費用がかかりません。また株式会社は商号変更しているため官庁や金融機関への変更手続きが必要ですが、特例有限会社ならその必要はありません。
株式会社のメリット (特例有限会社のデメリット)
@ 株式会社の方が信用度が高い
一般的に有限会社より株式会社の方が対外的な信用度が高いと言われています。最低資本金制度が廃止されたので、資金不足で有限会社を選択した会社は、株式会社に移行が可能になりました。
A 会計参与等の選任が可能
株式会社は会計参与や会計監査人の選任が可能です。これらの選任によって会社の作成する計算書類に信用力がつき、対外的な会社の信頼性を高める効果があります。
B 取締役1名、監査役なしでもOK
従来、株式会社は3名以上の取締役の選任や、監査役の選任など小規模な閉鎖会社にとって不利な規定がありましたが、会社法では、株式譲渡制限会社など小規模な閉鎖会社については定款で規定することにより取締役を1名にしたり、監査役を置かないことも可能となりました。このため会社運営が実態に合った形で行えるため、有限会社との差異が小さくなっています。