いよいよ4月1日から「総額表示」が義務づけられます。対応は万全ですか?

  「総額表示」は消費者に販売する取引が対象

(1) 「総額表示の義務づけ」とは?

 不特定かつ多数のもの(つまり一般の消費者)に対して商品等を販売する場合で、商品等の価格をあらかじめ表示するときに消費税額(地方消費税を含む)を含めた価格表示(総額表示)を義務づけるというものです。

(2) 対象となるのは?

 総額表示の義務づけの対象となるのは、消費税の課税事業者が一般消費者に商品等を販売するといった取引です。

(3) 総額表示しなければならない場合 (例)

 値札、商品陳列棚、店内表示、商品カタログなどへの価格表示

 商品のパッケージなどへの印字あるいは貼付した価格表示

 ダイレクトメールや新聞折込広告などにより配布するチラシの価格表示

 新聞や雑誌、テレビ、インターネットのホームページ、電子メールなどを利用した広告の価格表示

 ポスターや看板などへの価格表示など

(4) 価格表示の例

 消費税額等を含めた支払総額が明示されていることが重要です。下のような表示が考えられます。

<総額表示の対応フローチャート>

 消費税の課税事業者ですか?

免税事業者は総額表示

義務づけ対象外です。

 「不特定かつ多数の者」に対して

商品等を販売していますか?

特定の者との契約または注文に

基づく事業者間取引は対象外です。

 専ら他の事業者に課税資産を

販売するといった取引ですか?

 

価格表示について総額表示

への対応が必要です。

 総額表示の影響はありません。

 

  

   <総額表示例・税抜き価格1,000円の場合>

 1,050円

 1,050円 (税込み)

 1,050円 (本体価格1,000円)

 1,050円 (うち消費税50円)

 1,050円 (本体価格1,000円、消費税50円)

 1,050円 (税込み1,050円)

 * 税抜き価格の方が目立つ色使いや大きさにするのは適正な総額表示とはなりません。

 

  各業界の対応は?

総額表示義務づけに対して、関係業界あるいは企業の対応はいろいろです。参考までに一部を紹介します。

<表1 : 総額表示施行に伴う表示の変更、価格政策の変更>

 百貨店   多くは本体価格を併記する方針。 
 百円ショップ大手O社   表示価格をすべて105円に切り替える。 
 店舗名称は「百円ショップ」を継続。
 酒販業界   安売りの激しい350ミリリットル缶ビールの箱売り 
 (24本入り)が4千円台に引き上げられる公算大。 
 衣料品製造・販売S社   4月以降、店頭価格を据え置き。実質値下げ。
 出版業界   新刊本などに総額表示のスリップを挟み込む方式 
 に切り替える。
 ガソリンスタンド   全国石油商業組合連合会は組合員に呼びかけ、 
 店頭看板を総額表示に変える方向。
 ラーメン店H社   総額表示を前倒しで実施。
 ハンバーガーチェーンM社   顧客へのサービスのスピード化と分かりやすい価格 
 表示のために、単品、セットメニューの価格のバランス
 を見直す。

 

  公取委が総額表示に伴う違反事例を公表

 総額表示の義務づけに伴って、公正取引委員会は、独占禁止法などに違反する可能性のある次のような事例を公表しています。小売業界など関連企業には慎重な対応が求められます。

 「仕入価格の引下げ」

従来の税抜き価格をそのまま税込みの販売価格とし、納入業者に消費税分を仕入価格から引き下げてもらう。

小売業者が納入業者に対して取引上優越的な立場にあり、充分な協議がなく一方的に仕入価格を引下げさせた場合は、独占禁止法または下請法に違反する恐れがあります。

 「値札付け替えのための社員の派遣要請」

値札付け替えのため、商品の納入業者に社員の派遣を要請する。

小売業者が納入業者に対して取引上優越的な立場にあり、派遣の条件や対象商品等について充分協議することなく一方的に派遣を要請することは、独占禁止法などに違反する恐れがあります。


「小売業者が納入業者に対して取引上優越的な立場」にあるとは、納入業者にとってその小売業者と取引できなくなると経営に大きな支障をきたすため、不利益であっても要求を受け入れざるを得ないような場合をいいます。